アレも聞きたい,コレも聞きたい! ~たかちゃん さん編~

「アレも聞きたい,コレも聞きたい!」では,呉市で暮らす外国人インタビューをお届けします。今回は,ふたつの国のルーツをもつ高校生にお話を伺いました。自身のバックグラウンドや,外国籍の母親のこと,将来のことなど,等身大の高校生の「今」をありのまま語っていただきました。
【インタビュー回答日:2月5日】

♪♪ 今回のゲスト ♪♪
たかちゃん さん(17)
出身国:日本・呉市
母語:日本語
好きな食べ物:フルーツ
好きな日本の有名人:トーマス デーリー
          (イギリスの飛込競技選手 東京五輪の金メダリスト)

Q1:たかちゃんは2024年の夏休み宿題応援プロジェクトにボランティアとして参加してくださいました。ボランティアに参加しようと思った理由をおしえてください。
ボランティアや国際的なことに関わってみたいと思っていたこと,人に教えることが好きということがあり,呉市内で何かないかなと探していたときにこのボランティアを知り,申し込みました。

-実際参加してみてどうでしたか?-
自分も外国にルーツを持っていること,小学校のとき自分と同じようなバックグラウンドをもつ児童が多かったこともあり,活動の場の雰囲気にとても親近感を覚えました。様々な国の子どもの学習をサポートすることは楽しかったですし,子どもと一緒に取り組んだ問題が解けたときにはその子と同じような達成感がありました。

Q2:ご自身はふたつの国のルーツをお持ちですが,日本とベトナム,それぞれの好きなところ,いいところを教えてください。
日本には,おもてなしの精神や丁寧さ,食べ物の質の良さなど海外から観光で訪れるには良い要素がたくさんあると思います。また,日本人の長所は勤勉なところだと思います。(良いところなのかわかりませんが)遠慮がちなのも特徴だと思います。自分も日本で生まれ育っていることもあり,日本人の遠慮精神はしっかり持っています。
ベトナムは,日本より,人と人との距離が近く,フレンドリーだと思います。自分も日本だと人見知りしてしまいますが,ベトナムに行くと初対面の人とも話せるようになります。(笑)また,日本以上に主食としてお米が日常的に食べられているなと思います。さらに「花鍋」やさまざまなハーブティーなど,花を観賞の対象だけではなく食材として多く扱う文化もステキだと思います。

Q3:友だちにご自身のルーツや,ベトナム出身のお母さまの民族的な背景を知ってほしいと思いますか?または,ご自身のバックグラウンドを周りの人に知ってほしいという気持ちはありますか?
あります。自分はベトナムと日本のアイデンティティを持っていますが,自分のバックグラウンドに興味を持ってもらえるのはうれしい,もっと知ってもらいたいと思いますし,母のことも知ってほしいです。日本ではあまり知られていませんが,ベトナム語にも中国語由来の言葉がたくさんあり,似ているものが多いので,ベトナム語を学ぶ人が増えたらいいなと思います。

Q4:ふたつの国のルーツを持って生まれたことでよかったと感じることはありますか?
それはどんなときですか?

感じることはあります。(それまであまり自分のバックグラウンドを意識したことはなかったが)小学校1年生のときに「お母さんはベトナム人」という話を友だちにしたら,「ハーフじゃん!」と自分に興味を持ってくれた時とてもうれしかったのを覚えています。また,当時は放課後に児童会に通っていたのですが,児童会には外国にルーツをもつ児童がたくさんいました。児童会は普段の学校生活ほど学年の境界線がなく,学年を超えて色々な外国ルーツの児童との交流があり,そこで多様性を受け入れる心が身につき,自身のアイデンティティに誇りをもつことができました。
今,高校2年生ですが,アメリカの大学に留学することを考えていて,日本語,英語,さらには母のネットワークを使ってベトナム語でも現地(アメリカ)の大学の情報を集めています。ふたつの国のルーツを持つことで,視野が広がり,集められる情報も2倍になることはふたつの国のルーツを持っているからこその利点だと思います。

Q5:たかちゃんのお母さまはどんな方ですか?
子ども思いの母です。普段はどちらかというと厳しいタイプで,何事においても子どもの自立を促す行動を取りますが,子どものやりたいこと(図書館で一緒に勉強するなど)に一緒に付き合ってくれる一面も持っています。

Q6:お母さまとは何語で話しをしますか?
自分はあまりベトナム語を話せないので,日本語で話します。母が来日した21年前は今ほど日本語学習教材が充実していなかったため,携帯電話のメッセージなどで日本語を勉強したりしたそうです。今は会社で若いベトナム出身の人たちの仕事を指導する立場になり,仕事で使う日本語の勉強や日本語能力試験の勉強に励んでいます。

Q7:どんな人と一緒にいるときが一番落ち着きますか?たかちゃんが最も落ち着ける場所はどこですか?
中学校時代の友人と一緒にいるときが落ち着きます。その友人は台湾からの帰国子女で,自分は当時まだそこまで英語が上手ではありませんでしたが,国際的なことに興味があったので,自分から話しかけて仲良くなりました。別々の高校に通っている今でも仲良くしていて,とても落ち着く存在です。また,本を読むことが大好きなので,図書館や本屋さんが落ち着ける場所です。

Q8:ふたつのルーツを持って生まれたことがご自身の人生に大きな影響を与えていると思いますか?
思います。
-それはどんなことで?-
母が外国人だったから外国に興味がわいたのだと思っていて,もし両親とも日本人だったら,ここまで興味をもつことはなかったと思います。アメリカの大学に入って多様な文化に触れたいと思ったのも,自分がふたつのルーツを持っていることが大きく影響していると思います。

Q9:将来は,どこでどんなことをしたいですか?
絶賛悩み中です(笑)。なにかしら国際的なことに関わりたいと思っています。社会問題全般や教育,言語など興味の幅は広いので,研究や専門的な教育に重点を置く総合大学ではなく,自分の興味や将来の目標に合わせて幅広い分野の科目を学ぶことができるリベラルアーツカレッジに進学したいです。文系の学問だけでなく,自然科学の知識も身に付け,広い視野を持ちたいです。

Q10:たかちゃんにとって故郷とは?
(「え~?」と困ったような様子で)故郷と言われると難しいですが,自分にとってあまり暮らしたことのないベトナムは「恋しい」場所,日本は親しい友がいる「帰りたい」場所です。

Q11:自分はズバリなに人かと聞かれたら?
(再び「え~?」と困った様子で)自分の国籍や属性を意識して生活したことがないし,カテゴライズする/されるのは好きではないので,あえていうなら「地球人」です!


「本が好き」というたかちゃんは,高校生らしさと,知性からくる大人っぽさの両面を持ち合わせていて,回答の一つひとつが非常に興味深く,ついつい色んなことを聞いてしまいました。そして気がつけば3ページにわたるロングインタビューに。
ふたつの国のアイデンティティをもつ自分とポジティブに向き合い,両方の文化を愛するたかちゃんが,将来どんな大人に成長するのか,とても楽しみに感じるインタビューでした。
またお話を聞かせてくださいね!

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